基本的な理論

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格子振動

結晶のように原子が周期的に配列した系の振動モードは、振動の波数kで 表される、実空間のフーリエ空間上で簡潔に表現できます。重みを取り 入れた振動モードの分散の計算は、実空間上のWeigner-Seitz cellに相 当する第一Brillouin zone内をサンプリングすることで実現され、ここから 量子効果を取り入れた系の振動に関する熱力学諸量も計算することが できます。 本ソフトではまず、パラメーターによって決定されるポテンシャルから 実際に原子を動かして、力のテンソルを計算します。 本来、N個の原子のテンソルは1原子あたりの自由度が3であること から3N×3Nのマトリックスになりますが、原子の周期配列と対称性 を考慮すると、最終的には波数kで表される位相因子exp(-ikr)を繰り込み、原子質量の 幾何平均で規格化された 3n×3nのマトリックス(Dynamical Matrix)で表現できます(nは単位格子 中の原子数)。 第一Brillouin zone内の各k点に対応したこのマトリックスに対する 固有値が、そのモードの角振動数の2乗になっていることから 振動の分散などを得ることが出来ます。

EAMポテンシャル

通常ポテンシャルというとレナード・ジョーンズ型の様な2体間ポテンシャルが 挙げられますが、金属やその化合物については2体間の相互作用のみで系のエネ ルギー等を表現することが難しくなります。そこで本ソフトでは最もシンプルに 多体間相互作用を扱うことの出来るEAMポテンシャルを採用しました。 EAMポテンシャルはタイトバインディング理論と密接に関係しています。永年方 程式のハミルトニアンに対するGreen関数を連分数展開し、展開を2次momentで打ち切って 高次のmomentを有効媒質で近似したとき、Green関数のターミネーション条件から電子の状態 密度は半楕円で描かれます。この操作は注目する原子と直接相互作用するいわば最近接原子間 との相互作用までを取り入れることに相当します。 EAMポテンシャルはこの近似を良く再現するように、 周囲の原子のつくる電子密度の中に原子を挿入するエネルギー(Embedding Energy) を取り入れたものです。現在多体間ポテンシャルで注目を集めているBOP(Bond Order Potential)の もっとも単純な形ととらえることもできます。


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